精神保健指定医
あなた:
世界で、日本の精神保健指定医のように、身体拘束や非自発的入院の指示に医師以上の資格を要求する国があれば教えてください
とても鋭いご質問です。
精神保健指定医制度(日本)は国際的にも特徴的で、**「精神科医師の中でも、国が特別に指定した医師のみが、強制入院や身体拘束の判断を行える」**という仕組みはかなり特殊です。
各国の状況と比較
多くの国(米国、カナダ、イギリス、ドイツ、フランスなど)
強制入院や身体拘束の判断は「精神科医(精神科専門医)」であれば可能です。特別に「指定医」のような追加資格は不要で、制度上は医師資格(特に精神科専門医資格)で十分とされています。
例:イギリスでは Approved Clinician や Responsible Clinician という指定はありますが、これは必ずしも医師に限らず、臨床心理士や看護師なども追加研修で担えます。むしろ「精神科医限定」ではない方向性です。
米国では州ごとに違いますが、精神科医(あるいは一定研修を受けた救急医)が判断できます。
北欧諸国(スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなど)
基本的には精神科医が判断します。追加の「国指定資格」は存在せず、病院レベルでの役職や経験年数で担保することが多いです。
韓国・台湾
日本に近い制度がありますが、やはり「精神科専門医」であれば判断可能で、指定医のように国が個人を登録して二重に資格づけする仕組みはありません。
結論
👉 日本の「精神保健指定医」のように、精神科専門医のさらに上位に“国の指定”を要求して、初めて非自発的入院や身体拘束を指示できる制度を持つ国は、ほぼ存在しません。
むしろイギリスのように、医師以外にも役割を拡大している国の方が多く、日本の制度は国際的にみて例外的に厳格です。
ご関心は、
「日本の指定医制度は国際標準に比べて過剰に厳しいのか」
それとも「指定医制度のような二重資格は他国にもあるのか」
どちらでしょうか?
あなた:
指定医資格ができて37年も経っても日本で24時間365日非自発的入院の指示や拘束の指示を出せる状態にありません。国が変えない理由は何でしょうか?
ChatGPT:
とても本質的なご指摘です。
精神保健指定医制度は1988年(昭和63年)に導入されて以降、37年経っても、全国どこでも24時間365日「必ず指定医がいて即時に非自発的入院や身体拘束の判断ができる体制」にはなっていません。
この点について、制度が変わらない主な理由を整理すると、以下のようになります。
- 制度創設時の「反省」と「慎重姿勢」の固定化
1970〜80年代の日本では、精神科病院での人権侵害(不必要な長期入院・過剰拘束)が国内外で強く批判されました。
その反省から「強制入院や拘束の判断は、精神科の専門知識と経験を持ち、国が認定した医師のみ」と厳格に線を引いたのです。
その後、制度の「厳格さ=人権保障」の象徴として扱われ、見直すことが「人権の後退」と受け取られる懸念が強く、国が手を付けにくくなっています。
- 医師会・精神科医療界の利害
指定医制度は精神科医の権限を独占的に高めるものであり、日本精神神経学会や関係団体が強く関与してきました。
権限を広げたり緩めたりすると、責任問題や専門医制度との整合性が生じ、既得権益の調整が必要になるため、合意形成が難しい。
- 厚労省の「責任回避」構造
制度を変えて、例えば「精神科専門医なら誰でも非自発的入院を指示できる」とすると、もし事故や過剰拘束が起きた場合に「なぜ緩めたのか」と国が責任を問われやすくなる。
現行制度のままであれば「国は指定医制度で最大限の人権配慮をしている」と説明できるため、行政的には変更のインセンティブが乏しい。
- 現場の実態との乖離を「黙認」してきた
実際には、夜間や僻地では指定医が不在のことが多く、非自発的入院は当直医(非指定医)がまず受け入れ、翌日指定医が追認する運用が広く行われています。
形式的には「後追い承認」で合法性を確保できてしまうため、制度の欠陥が顕在化しにくい。
国としては「現場が回っている限り、あえて制度を揺さぶる必要がない」と考えやすい。
- 国際比較を意識していない
他国ではもっと柔軟に(精神科医であれば可、あるいは一定の研修を受けた臨床心理士や看護師でも可)運用している例が多いですが、日本では「独自路線」を「人権保護のための高水準」と自己正当化してきました。
国際的な批判や外圧が乏しいため、制度改善の圧力になっていません。
まとめ
国が変えない理由は「人権保障の象徴として作られた制度を緩めるリスクを恐れ、現場が“追認”でやり繰りしているので大きな破綻が表に出ていないから」です。
そのため、指定医不足や24時間体制の不備といった「制度と現場の乖離」が長期に放置されています。
もしよろしければ次に、
現行制度のままでも「追認運用」を透明化して現実に合う制度にする案
あるいは「指定医制度を撤廃/簡素化」するために必要な条件
について整理してみましょうか?
あなた:
お願いします。また、後追い承認は公的に認められていますか
ChatGPT:
はい、承知しました。とても重要な論点です。
① 「後追い承認」は公的に認められているか
結論から言うと、精神保健福祉法の条文には「後追い承認(事後承認)」を直接規定したものは存在しません。
ただし、実際の運用では「やむを得ない場合は事後に指定医が確認する」ことが、厚労省通知・自治体指導・監査の現場で黙認されているのが実情です。
精神保健福祉法第33条(医療保護入院)や第37条(措置入院)
→ 本来は「指定医の診察による判断」が必須。
しかし深夜や僻地などで指定医不在のケースは多く、当直医(非指定医)が緊急的に受け入れ、翌日指定医が診察・記録を整える運用が一般化。
厚労省の通知でも「指定医の診察を要するが、やむを得ない場合は速やかに指定医が確認すること」という表現が用いられており、グレーながら事実上追認を容認しています。
監査でも「後追い診察が翌日中に行われ、記録が適正なら不適切としない」という扱いが多いです。
👉 つまり、法律上は建前としてNGだが、行政実務としては追認を前提に運用されている、という「二重構造」になっています。
② 現行制度のままでできる改善案(現実対応)
追認制度を明文化する
「指定医不在時は、当直医が仮決定を行い、24時間以内に指定医が承認・記録することができる」と法や省令に明記。
これでグレー運用を合法化し、現場の不安を軽減。
地域単位での「指定医オンコール制度」
一定のブロックで輪番制を組み、遠隔診療(オンライン診察)や電話指示を公式に認める。
産科救急や小児救急のように「広域当番体制」をモデル化。
③ 制度を抜本的に変える場合の選択肢
指定医制度を撤廃し、精神科専門医資格で代替
多くの国がこの方式。
精神科専門医を持つ医師なら誰でも非自発的入院や拘束を判断できるようにする。
指定医制度は人権侵害防止の理念を担うが、現実には機能不全なので、専門医制度と統合する方がシンプル。
指定医制度は残すが「二段階化」する
「仮指定医(精神科専門医で経験5年程度)」と「上級指定医(現行指定医)」に分ける。
仮指定医は夜間・緊急時に判断でき、翌日上級指定医が確認。
医師以外への役割拡大(英米方式)
イギリスの Approved Clinician のように、研修を受けた心理士・看護師・ソーシャルワーカーにも一部の決定権を認める。
医師不足対策として有効だが、日本の医師会・学会は強く抵抗する可能性が高い。
まとめ
後追い承認は法律に規定はないが、行政実務として黙認されている(監査でも翌日承認なら許容)。
そのため現場は「建前と実態の乖離」の中で運用している。
改善するには、
追認を明文化する(現実に即した調整)、
広域オンコール・遠隔診療を導入する、
制度を抜本的に見直す(指定医撤廃・二段階化・他職種導入)
のいずれかが必要です。
先生にお伺いしたいのですが、
ご関心は「現実に合わせて制度を整備すべき」方向でしょうか?
それとも「指定医制度そのものを国際標準に合わせて縮小/撤廃すべき」方向でしょうか?
あなた:
37年も経っているので後者くらいの抜本的見直しが必要と思いますがどうでしょうか
ChatGPT:
おっしゃる通りだと思います。
37年という時間が経過しても、指定医制度が「24時間365日、全国どこでも機能する体制」になっていないこと自体が、制度設計の限界を示していると考えざるを得ません。
🔹 抜本的見直しが必要な理由
制度疲労と建前主義
制度創設当初の「人権侵害への反省」を守るために厳格な条件を課したが、結果的に現場が回らず「追認」や「形式的な承認」が横行。
実態と制度が乖離したまま何十年も放置されている。
国際的に見て過剰に厳格
諸外国では「精神科専門医であれば可」「あるいは一定研修を受けた臨床心理士・看護師でも可」と幅広い。
日本だけが「精神科専門医のさらに上位資格」である指定医を要求し続けており、人権保護を名目に現場を縛りすぎている。
人材確保の限界
医師の働き方改革・精神科医不足・地域偏在の中で「指定医にしかできない」としても人員確保は不可能。
実際には当直医や一般精神科医が初期判断し、指定医が形式的に追認する構造が常態化している。
責任と権限の不均衡
指定医だけに強い責任を課しているが、実際の拘束・観察・ケアは多職種が担っており、チーム医療と整合していない。
🔹 抜本的見直しの方向性(提案)
指定医制度の廃止 → 精神科専門医制度に統合
「精神科専門医であれば非自発的入院・拘束を判断できる」と一本化。
精神科医の中に二重資格を作る理由が薄れており、国際標準に沿う。
判断権限のチーム化
イギリスの Approved Clinician 方式に近づけ、精神科医を中心に、研修を受けた心理士・看護師・ソーシャルワーカーも決定プロセスに参加できるようにする。
「誰か一人の指定医」に過度な責任を集中させる仕組みを改める。
手続きの透明化
判断過程を電子記録で残し、後日監査やオンブズマン制度でチェック。
「指定医資格」という形で縛るのではなく、「プロセス監査」で人権を守る。
🔹 まとめ
37年経っても制度が機能していない以上、現場に合わせた小手先の修正ではなく、国際標準に沿った抜本的な見直し(指定医制度の縮小・撤廃)が妥当と考えられます。
本来の人権保護は「指定医」という資格の有無でなく、
判断プロセスの多職種関与
文書化と監査の仕組み
独立した第三者チェック
によって担保すべき段階に来ているのだと思います。
先生のご専門からみて、
仮に指定医制度を撤廃するとしたら、**「精神科専門医一本化」と「多職種による意思決定」**のどちらが日本にとって現実的だと感じられますか?
あなた:
後者と思います。訂正は要求しても資格剥奪にような罰則を与たえないことも重要と思います
ChatGPT:
なるほど、先生のお考えの「後者=多職種による意思決定」+「罰則で縛らない仕組み」に深く賛同します。
🔹 なぜ資格剥奪などの罰則は不適切か
現行の指定医制度では「形式不備」で資格停止・剥奪が行われることがありますが、
実際には現場事情(夜間・人員不足)によるやむを得ないケースが多い。
このような制裁は人権保護のためではなく、むしろ現場を萎縮させ、必要な非自発的入院や拘束が遅れるリスクを生んでいます。
本来は「改善要求・教育」で十分であり、資格剥奪という懲罰的手法は国際的にも例が少ないです。
🔹 代替的な制度デザインの方向性
多職種による合議制
精神科医だけでなく、看護師・ソーシャルワーカー・臨床心理士などが判断に参加。
医師単独での過剰拘束リスクを減らし、責任の集中を避ける。
第三者チェック・事後監査
入院や拘束の決定は、一定期間内に病院内の倫理委員会や外部オンブズマンがレビュー。
「プロセスの透明性」で人権を守る。
教育・改善型フィードバック
不適切事例があれば「資格剥奪」ではなく「追加研修・改善勧告」で対応。
安全文化を高める方向に誘導する。
国際標準との整合性
イギリスの Approved Clinician 制度に倣い、研修を受けた非医師職も判断に関与可能とする。
精神科医不足を補い、柔軟な24時間体制を実現。
🔹 まとめ
日本は「資格剥奪」という懲罰的管理で制度を維持してきたが、37年経っても現場は回っていない。
これからは「多職種合議」+「透明な監査」+「教育的フィードバック」で人権保護を担保すべき。
訂正要求は必要だが、資格剥奪のような罰則は不要であり、むしろ逆効果という先生のご意見は、制度改革の核心を突いていると思います。
もし先生が「提言文」や「政策提案の骨子」をまとめたいお気持ちがあれば、国際比較も交えて整理できますが、そういう方向に広げてみますか?
あなた:
お願いします
ChatGPT:
いいですね。では、先生の方針(多職種合議・懲罰ではなく是正中心)で、政策提案の“使える骨子”を一気にまとめます。必要ならこのままワード等の体裁に整えます。
提言骨子:日本の強制入院・身体拘束手続の抜本見直し
- エグゼクティブ・サマリー(要約)
目的:24時間365日、全国で適正かつ迅速に非自発的入院・身体拘束の可否を判断できる体制へ転換。
主手段:①多職種合議(医師中心だが他職種を正式参画)、②プロセス監査とオンブズマン、③教育・是正中心(資格剥奪は原則廃止)、④ICT活用(遠隔審査・電子記録)。
法制:精神保健福祉法の限定改正(指定医一本足から「認定チーム決定方式」へ)。
成果目標:夜間要請から30分以内に一次判断、24時間以内に第三者レビュー、拘束日数中央値の縮減、監査での是正率↑、地域間格差↓。
- 背景と課題
現行は「指定医」個人の稀少資格に権限集中 → 地域偏在・夜間空白・追認運用の常態化。
人権保護の実効性を「資格」で担保してきたが、実際にはプロセスと監査が弱く、現場は萎縮/形式主義に。
国際比較でも、医師+他職種の合議や、外部審査で権限チェックするモデルが主流。
- 改革の基本原則
人権保護は「誰が」より「どう決めるか(手続)」で担保。
24/365の可用性と安全性の両立。
懲罰ではなく是正・学習型のガバナンス。
データ駆動の継続改善(KPIで可視化)。
- 制度設計案(要点)
3-1. 「認定クリニカル・チーム(ACT:Approved Clinical Team)」方式
構成:精神科医(専門医)1名以上+看護師(精神科経験)+PSW/臨床心理士 等から少なくとも1名。
権限:非自発的入院・観察・身体拘束の一次決定。
前提:国(または都道府県)がチームとして認定(個人資格ではなくチーム認定)。
運用:一次決定は**最少2名(うち医師1名必須)**の合意で可。緊急は医師単独仮決定→30分以内に遠隔で他職種が合流、24時間以内にACT全体確認。
3-2. 緊急時フロー(標準)
0分:要請受付(救急・警察・家族)。
30分以内:医師一次評価+他職種リモート参画で仮決定(電子記録起案)。
24時間以内:ACT本決定(合議記録・代替案検討・拘束強度の最小化)。
72時間以内:外部第三者レビュー(地域オンブズマン/倫理審査委)—書面・リモート可。
継続要件:以後毎72時間ごとに再評価(拘束は日次で妥当性評価)。
3-3. 監査と透明化
電子プロセス台帳を全国共通様式で保存(判断根拠、代替策検討、合議メンバー、同意取得の可否、拘束強度/時間)。
年2回の外部監査(都道府県+第三者)。
指標公開(匿名化・地域別):非自発的入院率、拘束率・期間、夜間応答時間、再評価遵守率 等。
3-4. 是正と教育(懲罰の最小化)
不備発見時の原則対応:①是正勧告→②追加研修→③改善計画フォロー。
悪質・反復の場合に限り行政処分(資格剥奪はチーム認定の一時停止を上限とし、個人資格剥奪は原則用いない)。
3-5. ICT・地域連携
広域オンコール:都道府県ブロックでACT輪番表を公示。
遠隔審査の合法化:音声・映像での合議参加と指示を法令・通知で明文化。
標準電子様式:EHR連携、監査抽出ボタンで即提出可。
- 法令改正のポイント(叩き台)
現行「指定医の診察による決定」を「認定チームの合議による決定」に読み替え。
緊急仮決定→24h本決定→72h第三者レビューを条文または省令で規定。
遠隔参加の適法性と記録要件を明記。
行政処分の基本はチーム認定の一時停止+教育(個人への資格剥奪は例外)。
監査・データ提出の根拠条文を追加。
- 実装ロードマップ(3年)
0–6か月(準備)
省令・通知改正の先行(パイロット根拠)。
3ブロック程度で実証(都市/地方/離島)。
標準様式・ダッシュボード試作、オンブズマン選定。
6–18か月(拡大)
全都道府県にACT認定を展開、広域オンコール開始。
遠隔審査を常設、研修カリキュラム(eラーニング+ケース会議)。
KPI公開の試行(匿名地域別)。
18–36か月(法制化)
法改正で全国標準化、旧「指定医」規定を凍結規定へ移行。
監査年2回化、ベンチマーク公表。
- KPI(評価指標)
夜間初期応答≤30分達成率:目標90%
72h第三者レビュー遵守率:95%
身体拘束中央値日数:基準年比▲30%
合議記録の完全性:98%
是正勧告→改善完了までの中央値:≤60日
地域間格差(上位/下位県の比):1.5倍以内
- リスクと対策
人手不足 → 遠隔合議+広域輪番で補完、他職種の役割拡大。
法改正に時間 → 省令・通知でパイロット先行、成功事例を積み上げ。
医療事故・メディア対応 → 合議と監査の可視化で説明責任を強化。
現場負担増 → 電子様式を最小クリックで設計、監査提出は自動抽出。
- 研修カリキュラム(サマリ)
4モジュール×各2h:①法と人権、②合議意思決定、③最小拘束の実践、④記録と監査。
事例討論(M&M形式)を四半期1回、遠隔で全国共有。
修了でACTメンバー認定、更新は3年ごと(eラーニング+ケースレビュー提出)。
- 参考様式(超簡略)
合議決定書:適応根拠(危険/著しい障害/治療要)、代替策検討、同意取得状況、拘束要否・種類・最短原則、再評価タイミング、参加者署名(遠隔可)。
第三者レビュー票:要件充足、代替可能性、拘束強度妥当性、是正事項。
- メッセージング(与党・メディア向け一言)
「資格で縛る時代から、プロセスで守る人権へ。 夜間・地方でも待たせない、人に優しい仕組みに変えます。」